AIエージェントの試行 ― 実験データベースBRIXとLLMの統合
#例1-材料実験における相関分析 #例2-自動車実験における環境条件別フィルタリング
背景
iASYS Technology Solutionsでは、大規模言語モデル(LLM)と、データ分析・処理プラットフォームであるBRIX LITEを、Model Context Protocol(MCP)を用いて接続し、実験データを処理するAIエージェントを試作しました。本取り組みでは、AIエージェントがどのようなことを実現できるのかを検証しています。
AIエージェントは、曖昧なものから具体的なものまで自然言語での指示を理解し、行動計画を立て、自律的に複雑なデータ処理を実行します。
本ブログでは、その試行例の一部をご紹介します。さらに詳細な事例や技術的なアプローチにご関心のある方は、ぜひ記事「 LLMとBRIXが実現する、自然言語によるデータ分析 Model Context Protocol(MCP)による実験データベースとLLMの統合」をダウンロードしてご覧ください。
試行例1: 材料実験における相関分析
近年、材料実験の分野では、膨大なデータの中から特定の物理量間の関係性を見つけ出すデータ駆動のアプローチ(マテリアルインフォマティクス)が注目されています。
記事の「3.2.5 相関分析」では、AIエージェントが、ユーザーからの簡単な指示に基づき、データセットから必要なパラメーターを選び出し、統計的な相関分析を自動で実行した事例を紹介しています。これにより、新しい材料開発における重要な知見を、迅速かつ容易に抽出できることができます。
<試行例1:結果と考察>
プロンプト:配合量が多いほど強度が向上する原料を教えてください。
結果: 成功
実行時間: 約1分
考察: プロンプトは「配合量が多いほど強度が向上する原料」を尋ねるという、単一の答えを求めるものでしたが、LLMは全材料を対象に網羅的な相関分析を実施しました。これにより、Material_kが最も強い正の相関を持つという結論を導き出し、他の材料の傾向(正の相関、負の相関、不明確)も合わせて提示しています。

図1.相関分析実行結果
試行例2:自動車実験における環境条件別フィルタリング
自動車の走行実験データを使用し、多様な環境条件が絡む複雑なデータセットへの適用も試みました。
記事の「3.3.3 環境条件別フィルタリング」では、AIエージェントが「雨天時の高速道路走行データのみ」といった条件に基づき、データをフィルタリングし、必要なサブセットを高速に作成した事例を紹介しています。これにより、特定環境下での車両挙動を効率的に評価することが可能になります。
<試行例2:結果と考察>
プロンプト:霧の条件(Weather_condition=3)でテストされたプロトタイプの応答時間を比較してください。分析は不要です。
結果: 成功
実行時間: 約30秒
考察: システムは特定の環境条件(霧)での複数性能指標を30秒で効率的にフィルタリングし、応答時間を中心とした性能比較を実行しました。単純なランキングだけでなく、関連指標も同時に表示することで、環境条件下での総合的な性能評価を提供できています。

図2.環境条件別フィルタリング実行結果
おわりに
本取り組みでは、自然言語指示で従来の手作業や専用ソフトウェアが必要だった作業を大幅に効率化できることが分かりました。
BRIX LITEとMCPを介したLLM連携により、過去の膨大な実験データを「探せない・使えない資産」から「いつでも活用できる知的資源」へ変革できる可能性を実証しました。
LLMの限界を理解した人間との協調システムにより、研究開発現場での生産性向上に大きく貢献できると期待されます。
詳細記事のご請求
さらなる試行事例や詳細な技術的アプローチにご興味のある方は、ぜひ記事 「 LLMとBRIXが実現する、自然言語によるデータ分析 Model Context Protocol(MCP)による実験データベースとLLMの統合 」をダウンロードしてご覧ください。


